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ペアリングレシピ考案時に気をつけたいこと(風味の相性・味のバランス編)

ペアリングレシピを考案する際に気をつけるべきポイントは、料理と飲料(ビール、ワイン、日本酒など)の風味や構成要素のバランス、そして消費者の体験全体に配慮することです。以下に、特に重視すべき観点をまとめます。


風味の相性(フレーバーマッチング)

風味の相性(フレーバーペアリング)には主に3つの基本的なアプローチがあります。それぞれに特徴があり、目的に応じて使い分けることが重要です。


⑴補完(complementary)

料理と飲み物が似た風味や成分を持ち、互いの良さを引き立て合うペアリング。

ペアリング例)

  • ローストポーク × ダークラガー:両方に「カラメル系の甘みと苦味」があり、深いコクを増幅。
  • チーズケーキ × シャルドネ(樽熟成):バター感・クリーミーさが共通。

利点)

  • 味わいに一体感があり、「安心感のあるマリアージュ」になる。
  • 飲み物と料理が溶け合い、余韻が長く続く。


⑵対比(Contrasting Pairing)

異なる味や食感をぶつけて、バランスや爽快感を演出するペアリング。

ペアリング例)

  • 脂っこい唐揚げ × 柑橘系ホップのIPA:脂をカットする苦味と酸味でキレを生む。
  • スパイシーカレー × 甘口白ワイン(リースリング):辛さを甘みが和らげてくれる。

利点)

  • 味の変化がはっきりしていて「刺激」や「意外性」を演出。
  • 食中に飲み物がリセットの役割を果たし、次の一口を楽しみにさせる。


ブリッジ(Bridging Pairing)

料理と飲み物に共通する香り成分や食材を橋渡しに使って調和を生み出す。

ペアリング例)

  • ハーブ入りチキン × ハーブ香のあるビール(セゾンなど):ローズマリーやタイムを共通項に。
  • 柑橘ソースの魚料理 × 柑橘系ワイン(ソーヴィニヨン・ブラン)。

利点)

  • 両者に共通点があることで自然なつながりが生まれる。
  • 食材のアレンジで自在に設計しやすい。


補足:風味の基本5要素と相性例

味の要素合わせやすい風味例役割・効果
甘味辛味、苦味、塩味辛さや苦味を和らげる。
酸味脂肪、甘味口の中をリセットし、爽快感を与える。
塩味甘味、酸味、うま味味を引き締める。甘みを引き立てる。
苦味甘味、脂肪重さをカットする。アクセントに。
うま味うま味、塩味味に深みを出す。シナジー効果あり。


味のバランス

「味のバランス」はペアリングの中核となる要素で、料理と飲み物の強さ、構成、持続性を総合的に調和させることが目的です。どちらかが主張しすぎたり、逆に両方がぼやけたりしないよう、「五味(甘味・酸味・塩味・苦味・うま味)」や「濃淡のバランス」を見極めて設計します。

味のバランスを考える上で注意するべき点4つをご紹介します。


⑴味の強さ・濃さを揃える

料理と飲み物の“味の濃さ”が近いことが基本となります。「濃厚な料理には濃厚な飲料を」「繊細な料理には軽やかな飲料を」が基本です。

例)

料理合う飲み物解説
ステーキ(濃厚・脂っこい)フルボディ赤ワイン肉の旨味とタンニンの強さが一致
白身魚のカルパッチョ軽めの白ワイン or 日本酒繊細な風味に寄り添うように軽めで


⑵五味のバランス

A. 甘味(甘さ)
  • 甘味のある料理には、同等またはそれ以上の甘さのある飲み物を選ばないと飲み物が“薄く”感じられる。
  • 例:デザートにドライワインはNG。代わりに貴腐ワインやポートワイン。
B. 酸味
  • 酸味は食欲を増進させ、脂や甘みをリセットする。
  • 例:揚げ物や脂っこい料理と、酸のある白ワインやビール(ヴァイツェンなど)は好相性。
C. 塩味
  • 塩味は苦味や酸味を引き締め、甘味を引き立てる。
  • 塩味の強い料理(干物、チーズなど)にはワインやビールの甘味・果実味が合う。
D. 苦味
  • 苦味はアクセントや食後の余韻として機能。
  • 苦味のあるビール(IPA)は脂っこい・甘味のある料理とバランスをとる。
E. うま味
  • うま味は重なり合うことで増幅(グルタミン酸×イノシン酸のシナジー)。
  • うま味の強い料理(昆布だし、トマトソース)とワイン、日本酒は特に相性がよい。


⑶口内調和と余韻の長さ

  • 食べた後の余韻が長い料理には、余韻の長い飲み物(熟成系、樽香ありなど)を。
  • 飲み物が先に消えると、バランスが悪く感じる。


⑷アルコール度数とボディ感

  • 高アルコール度数の飲料は、脂分・甘味・辛味のある料理に対応しやすい。
  • 例:スパイシーなタイ料理 × 高アルコールのホップ強めIPA
  • 低アルコールの飲み物は、軽めの料理や前菜と合わせやすい。


まとめ:味のバランス設計のコツ

要素意識すること
濃さのバランス「料理 ≒ 飲み物」の強さにする
味の五味甘・酸・塩・苦・うまの補完・対比
持続時間(余韻)同じくらいの長さに揃える
温度・食感違和感がないように調整